弛緩性便秘 ・痙攣性便秘 ・直腸性便秘・・・など ~ 便秘と大腸癌(大腸がん)

main_top_over_navi

弛緩性便秘 ・痙攣性便秘 ・直腸性便秘・・・など

便秘とは・・・

便秘(constipation)とは,糞便の腸管内における異常な停滞あるいは通過時間の異常な延長により,排便回数や排便量が減少した状態を言います。また,糞便が腸管内に停滞するため,水分量の減少が起こり糞便が硬くなることも多いようです。

排便回数や排便量には個人差が大きく,また同一人でも食事内容や量によって変動が大きいのが通常です。つまり便秘を厳密に定義することは難しいという事です。
一般的には排便回数の減少(3~4日以上排便のないもの),便量の減少(主観的な問題で判断が難しい),硬い糞便により,排便に困難を感じた状態と考えられます。

これらのうち,一般的によく用いられているのは,排便回数の減少です。

困っている本人は
「便の量が少ない」
「便が硬い」
「排便しにくい」
「排便の回数が少ない」
「便意がない」などと訴えることが多いものです。

同時に,腹部膨満感,腹部不快感,腹痛などを伴うことが多いです。


便秘を訴える頻度・・・

外国の検討で,便秘は一般人の約2%にみられ,そのなかで便秘を主訴に病院を受診する人は 1.2%程度であると報告されました。

便秘は男性より女性に多く,加齢とともに増加するようです。

日本の場合ですが厚生労働省の国民生活基礎調査では、
便秘の頻度は
20~40歳代で男性   1%以下,女性 3~4%,
50~60歳代で男性 1~4%,   女性 4~7%,
70歳以上では男性 6~13%,   女性 8~12%
だったそうです。

病態の考え方は?
経口摂取された食物は,消化吸収を受けて盲腸に達し(平均2~6時間),上行結腸から横行結腸中部でさらに水分が吸収されて便塊が形成されます。(5~6時間)
さらに下行結腸から S状結腸に送られます。(12時間前後).
S状結腸・直腸移行部の平滑筋は緊張しており,便塊は S状結腸に蓄えられます。
直腸は通常空っぽの状態です。

これらの便塊を直腸に送り込む強い蠕動が食後(特に朝食後)に起こり,このために直腸壁が伸展し,便意が引き起こされることになります。
胃腸反射とも言うようです。

したがって,健常者では 1回朝食後に便意を覚えるのが普通と言う事になります。


便意が感じられると反射的に結腸下部から直腸壁の収縮,肛門括約筋の弛緩(ゆるみ)が起こり,肛門挙筋が上昇する(排便反射がおこり)し、随意的に腹筋,横隔膜を収縮させることによって腹圧が高められ,排便が行われる事になります。

このような排便機序の各段階の障害により便秘が起こりえます。


便秘はその起こり方や原因によって,
急性と慢性,
器質性と機能性に分類されます。

■■急性便秘

急性便秘のうち一過性便秘とは,旅行などによる食事や生活様式の変化,あるいは運動不足などによって生じる機能的なもので,原因が除去されれば速やかに正常に戻ります。
器質性疾患で一時的に便秘の原因となるものには,炎症性腸疾患,肛門疾患,膵胆道系疾患,子宮付属器の炎症,重篤な感染症,脳卒中などがあります。

■■慢性便秘

機能性器質性に分けられます。

機能性便秘はさらに弛緩性便秘 最多、痙攣性便秘、直腸性便秘 に分けることができます。


機能性便秘のうち最も多いのが
弛緩性便秘です。
弛緩性便秘は大腸の運動の減退に基づくもので,高齢者や無力体質,多産婦などに多く,腹部膨満感を訴えることが多いようです。

痙攣性便秘とは下行結腸や S状結腸に痙攣性の収縮を起こし通過障害を生じることによって便秘となります。

代表的なものとして過敏性腸症候群による便秘が挙げられますが,下痢と便秘を繰り返す交代性便秘を生じることも多いようです。

直腸性便秘は直腸内に糞便が送られてきても便意あるいは排便を生じないもので,便意を抑制する習慣や下剤の乱用のある者,痔や肛門疾患のある者にみられることが多いです。

慢性の器質性便秘には

大腸癌や腸管癒着,
子宮や卵巣の腫大,
腹腔内腫瘍などによる閉塞性のもの,
Hirschsprung(ヒルシュスプルング)病や
S状結腸過長症など先天性便秘などが
含まれます。

また,全身性疾患に伴う便秘,
すなわち糖尿病や甲状腺機能低下症,
低K血症や高Ca血症など代謝・内分泌疾患によるもの,
脳血管障害やParkinson(パーキンソン)病など神経筋性のもの,
さらに強皮症などの膠原病に伴う便秘などが挙げられます。
また抗コリン薬,抗うつ薬などの腸管運動を低下させる薬物の使用による便秘もある

これらの分類のなかで最も多いのは,慢性機能性便秘です。

大腸癌をはじめとする悪性腫瘍は臨床的に最も重要な疾患ですが,便秘のなかに占める相対的な頻度はそれほど多くありません。


■診断の進め方のポイント

機能性の急性便秘では症状が軽く診断も容易です。

器質性の急性便秘は,腹痛,悪心・嘔吐などを伴ったイレウス症状を呈することが多く,イレウスとしての処置を行いながら原因となった疾患の診断を進めていきます。
慢性便秘では,大腸癌をはじめとする器質性疾患を常に念頭におく必要があります。

■医療面接
便秘の内容は前述のように多様なので,訴えの内容を詳細に聞き,できるだけ客観的把握を行うようにします。

腹部症状は便秘に基づく症状と,原疾患による症状があり,両者の鑑別が必要です。

また,高齢者に多いうつ状態にみられる便秘では,食欲不振・不眠などを訴えることが多いので注意が必要です。

年齢や便秘の始まる様式にも注意が必要です。

中高年者で,最近比較的急に発症した場合は,大腸癌などの器質性疾患を考える必要があります。適切なタイミングで大腸の検査をする必要があります。
バリウムを使用する検査(注腸検査)と内視鏡検査では内視鏡検査を優先するべきです。
バリウムの検査の方が大腸がんの見落としが明らかに多いです。
もちろん大腸内視鏡検査でも見落としがありえますが、大きな大腸がんはまず見つかります。
大腸内視鏡検査を受けるべきだと思います。

これに対して,長期に持続するときは,弛緩性あるいは習慣性便秘のことが多いようです。

青少年期に始まる腹痛を伴った便秘の場合は,過敏性腸症候群を考えます。過敏性腸症候群の場合は下痢も起こることが多いです。

幼少時から持続する場合は,Hirschsprung病などの先天性疾患が示唆されます。

食生活では,低残渣食や水分摂取量の減少などが便秘の原因となります。水分の摂取量が少ない方はまず多めの水分摂取を心がけましょう。

環境因子も便秘に関係しえます。

排便感が生じても,ただちにトイレに行けない職業の人や,入院生活,寮生活が便秘の原因となることが結構あります。

モルヒネ などの麻薬,制酸薬,抗コリン薬,抗うつ薬などの薬物も便秘の原因となります。実際には中止できない薬が結構ありますので困ることが多いです。
下剤の服用についても,聞く必要があります。常用していると徐々に聞かなくなることがほとんどです。

既往歴では,開腹手術の有無を聞く必要があります。
開腹手術の既往は,腸閉塞・腸管癒着症などの頻度を上昇させます。


全身的な診察に加え,特に腹部の視診,聴診,触診をていねいに行う必要があります。

まず,腹部手術の瘢痕の有無を確かめ,聴診でグル音の亢進または減弱がないかを確認します。

グル音の亢進を認める場合には,大腸癌や腸管の癒着などによる閉塞を疑う必要があります。


痙攣性便秘では,ときに左下腹部に大腸が索状に触れ,圧痛を伴うことがあり重要な所見と成り得ます。

直腸指診は,便秘を訴える患者にはできるかぎり全例に行うべきですが、受けるがわの問題もあって全員に行うのは難しです。

肛門部疾患の有無,肛門括約筋の緊張の程度,直腸腫瘍の有無,直腸内糞塊の有無およびその性状(血液・粘液の付着)について調べた方がよい・・・のは当然ですが、肛門科以外の医師は実際にはしていない事が多いと予想します。

直腸内に糞便を触れる場合は直腸性便秘を考える証拠になります。

直腸指診は,直腸癌などをすぐに診断できるきわめて重要な検査である事は専門家はみな知っていますが、だれでも彼でもしていると患者さんの不評を買ってしまうので実際には状況によって必要な場合に限って直腸指診を行う方が良いと感じています。


・・・医療面接と身体診察を総合して考える点


中高年者で比較的最近発症した場合,あるいは血便,嘔吐,体重減少,貧血,腹部腫瘤など器質性疾患を示唆する症状・所見がある場合は,大腸内視鏡検査を速やかに行う必要があります。
内視鏡検査に関しては地域によってはトレーニングされた医師がいない場合がありますので、その場合は注腸検査で代用でやむを得ないと思います。・・・が選択肢がある場合で医師が内視鏡検査に慣れている場合はぜひ内視鏡検査を受けてるべきです。

これらの症状がない場合は,まず二次性の便秘の可能性を考え,代謝・内分泌疾患や神経筋疾患,膠原病などの全身疾患,金属中毒,薬物の使用の有無を確かめるようにします。

これらの要因がなければ,慢性の機能性便秘として弛緩性,痙攣性,直腸性便秘のいずれかと診断されます。


必要なスクリーニング検査とは?


医療面接と身体診察から,便秘をきたす疾患をある程度推測することが可能ですが,さらに診断を進めるためには,効率よくスクリーニング検査を行う必要があります。

1. 一般検査
末梢血液検査,
生化学検査(電解質,血糖値),
甲状腺機能検査,
腫瘍マーカーなど CEA

2. 糞便検査
器質性疾患の除外に便潜血反応は必須です。
最低2回(日にちを変えて)できれば3回すべきなのですが、同じ月だと
保険が認めてくれないことが多いです。そこで完璧を期すなら月をまたいで3回した方が良いです。

3. 腹部単純X線検査
鏡面像,腸管ガス像,糞便量などを確認します。

4. 大腸X線検査
大腸の形態異常(位置異常,過長症,拡張の有無など)を含めた器質性疾患の除外だけではなく,大腸の緊張の程度,ハウストラの状態など機能面でも多くの情報を与えてくれます。
5. 大腸内視鏡検査
器質性疾患の確定診断に有用です。
大腸メラノーシスはアントラキノン系の下剤の乱用を示唆します。
いわゆるヒョウ柄です。

6. 腹部超音波検査,腹部CT検査
腸管自体の情報には乏しいが,腹腔内臓器のスクリーニング以外に,腸管の拡張,腸管壁の肥厚,腹水の有無などの情報が得られます。


■診断確定のために


◆大腸癌の確定診断
病歴情報のうえからは,中高年の患者で,便秘が最近出現してきたり,便柱が細くなったなどの排便習慣の変化に加えて,血便や体重減少,腹痛を伴う便秘の場合は,まず大腸癌を疑うべきです。
特に血便と体重減少は重要で,機能性便秘の患者ではほとんどみられない特徴です。

また,便の潜血反応は必ず行うべきです。
直腸指診は肛門部の局所疾患の有無が鑑別できるのみならず,大腸癌の 40%近くが指の届く範囲に存在するため診断価値が高いです。
また,直腸内糞塊の有無を知ることができ,さらに潜血反応のための糞便も採取できるので,きわめて重要な検査と考えられます。出来る限り施行した方が良いです。

最終的には,直腸鏡検査,注腸造影,大腸内視鏡検査により診断を確定します。
血便や体重減少を伴う便秘の場合は,必ずこのアプローチを行う必要があります。

◆過敏性腸症候群の確定診断

若年~中年の間では比較的頻度の高い疾患で,下痢と便秘を交互に繰り返す交代性便通異常(下痢便秘交代症)の型をとることも多いです。

左下腹部の不快感や腹痛,腹部膨満感,食欲不振,悪心などの消化器症状のほかに,心悸亢進,めまい,頭重感などの神経症状を訴えることも多いですが,体重減少はみられないのが普通です。
排便量は少なく兎糞状の硬便で,排便後に疼痛は軽減することが多いですが,残留感を訴えることもあります。

腹部の触診で左下腹部に収縮した腸管を,圧痛を伴った索状物として触知することがあります。

直腸指診では直腸内は空虚が特徴です。

年齢によってはX線検査あるいは大腸内視鏡検査で器質性疾患を除外する必要があります。


◆弛緩性便秘の確定診断

慢性便秘の大部分がこの型であり,高齢者,長期臥床者,経産婦に多くみられます。

また,代謝・内分泌疾患や神経筋疾患,膠原病などの全身疾患や金属中毒,腸管運動を低下させる薬物の投与などでもみられることから,これらの疾患を 1つ1つ除外する必要があります。

弛緩性便秘では症状は乏しいので情報を的確に得る必要があります。

太く硬い便が排出され,腹部の触診でも下行結腸が便で膨大しているのを触知することがあり有用な情報となります。

直腸指診で直腸内に便の貯留を認め,直腸性便秘を合併していることが多いので総合的に判断する必要があります。

X線検査では大腸のハウストラは消失し,著しい拡張像がみられるのが特徴です。


◆直腸性便秘の確定診断

直腸に便が進入しても便意が起こらず,排便反射もないため排便が困難となっているもので,排便困難症(dyschezia)とも呼ばれます。

多忙な人や,痔などの直腸肛門病変のため排便痛のある人ではこの型の便秘をきたしやすいのが特徴です。

症状としては便意を欠くのが特徴で,便は硬く一部分割便となりやすく、
直腸指診では,直腸内腔は拡大し,糞便が残っている事を確認する必要があります。



side_top
↑このページの先頭に戻る

Copyright © 2011 便秘と大腸癌(大腸がん) All Rights Reserved.
Powered by OGUSYS co.,ltd.