大腸がんの発生から ~ 便秘と大腸癌(大腸がん)
大腸癌発生の病態から,
①通常癌common cancer,
②遺伝癌genetic cancer,
③炎症癌colitic cancerの3種に大別されます。
1)通常癌:
通常癌は一般にみられる癌で大腸癌の大多数を占めます。
大腸癌の発癌理論として,adenoma-carcinoma sequenceと
de novo説とがあります。
(a) adenoma-carcinoma sequence:前癌病変として腺腫があり,腺腫から癌が発生し浸潤癌へと進展していくとする説。
APC遺伝子の異常により腺腫が発生し,K-ras遺伝子の異常によって異型度が増し,p53遺伝子,DCC遺伝子の異常によって浸潤,あるいは転移をきたすとする考えであり,adenoma-carcinoma sequenceの理論的裏づけとされています。
K-rasは癌遺伝子ですが,ほかは癌抑制遺伝子です。
(b) de novo説:
正常粘膜から直接癌が発生してくるという考えです。
その根拠として,大腸にも陥凹型癌(Ⅱc)の存在が明らかとなり,腺腫を介さない癌が存在すると日本人の工藤医師が証明しました。
しかし,遺伝子学的な解析の結論はまだ出ていません。
2)遺伝癌:
大腸癌で遺伝的要因の明らかなものは,家族性大腸腺腫症と
遺伝性非ポリポーシス大腸癌とがあります。
a.家族性大腸腺腫症(FAC)は常染色体優性遺伝です。
大腸に100個以上の腺腫が発生する疾患です。
発生頻度は1/17,000で男女差はなく死因の70%は大腸癌で、このような方は定期的に内視鏡検査をする必要があります。
40歳で半数,60歳までに90%に大腸癌が発生するといわれています。
胃では,胃底腺領域に過誤腫性ポリープ,幽門腺領域や十二指腸(乳頭部近傍)に腺腫や癌のリスクが高いといわれています。
治療は,予防的な大腸摘除が行われます。
b.性非ポリポーシス大腸癌は,家系内に大腸癌が多発する常染色体優性遺伝の疾患です。
頻度は全大腸癌症例の約1~5%程度で発癌は,hMSH2,hMLH1,hPMS1,hPMS2,hPMS6(GTBP)など,DNAのミスマッチ修復遺伝子の異常が原因です。
その特徴は,
①家系内に腺癌多発(右側大腸癌,子宮体癌,胃癌),
②若年発症,
③高頻度の重複悪性腫瘍の存在,などがあります。
その診断基準として,
アムステルダムの診断基準とJapanese Clinical Criteriaがあります。
3)炎症癌:
長期経過した慢性の大腸炎,特に潰瘍性大腸炎に大腸癌の合併が多いことが知られています。
潰瘍性大腸炎の罹病期間が10年以上になるとそのリスクが高くなり定期的な大腸内視鏡検査が必要になります。
その前癌病変として異型腺管(dysplasia)が出現します。
これらは腫瘍性変化と考えられ,low grade dysplasia(LGD),high grade dysplasia(HGD)に分類されます。
HGDが発見された場合には発癌の頻度が高いことから手術が選択されることが多いです。
潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の特徴は,若年に発症し,多発傾向にあり,びまん浸潤型が多く,低分化癌や粘液癌が多く,周辺にdysplasiaを伴うことが多いとされています。